クライミングにおけるプロテインまたはBCAAの必要性について調べてみた。
正直プロテインやBCAAは高いからなぁ・・・
効率よく使いたいし、効率よく筋肥大を起こさせたい
色々追記、追記で長くなっています、、
1)プロテインっていつ摂取するのが一番いいのか論
1.筋トレ3時間後は、筋合成量(FSR)は顕著に上昇するが、筋分解量(FBR)も同様に顕著に上昇する。これらは、Rest時と比較するとどちらも有意差がある。
2.FSRは48時間後においても、減少はするが、Rest時と比較して上昇しており、有意差が認められる。FBRは時間経過とともに減少し続け、48時間後においてRest時レベルまで低下する。
3.筋トレ3時間後のFSRの値も24時間後、48時間後と比較して極端に高いわけでもない。有意差はありそう。
4.筋トレ直後の筋合成量が上昇するといわれるゴールデンタイムは、特別”ゴールデン”というわけではない。寧ろ、トレーニング後48時間にわたって筋肉は合成され続けるので、その間に必要量のタンパク質を摂取し続けていることの方が大切。
5.筋トレ後約2週間にわたり、栄養が足りている条件下においては増加した筋肉量を維持させための筋合成は増えたままである。
↓
つまり
「筋トレ直後は筋合成量(FSR)のみに着目すればゴールデンだが、分解も含めると特段ゴールデンというわけではない。その後48時間にわたり筋肉は合成され続け、その時に十分な栄養状態を保つ方が大切。」
1: Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans [Am J Physiol. (1997) E99-107.]
2:Changes in human muscle protein synthesis after resistance exercise [J Appl Physiol. (1985) 1992 73:1383-8.]
3:The time course for elevated muscle protein synthesis following heavy resistance exercise [Can J Appl Physiol. (1995) 20:480-6.]
2)プロテインの摂取が必要性なのか論
1.12週間の継続したトレーニングにおいて、運動後に20gのプロテインを飲んだ場合と水を飲んだ場合で筋肥大の差に有意差はない。
↓
つまり
「食事によるタンパク量が足りていれば、プロテインを飲んでも更なる筋肥大は起きない。」
4:Protein supplementation before and after exercise does not further augment skeletal muscle hypertrophy after resistance training in elderly men. [Am J Clin Nutr. (2009) 89:608-16.]
3)運動後に分泌される成長ホルモンと筋肥大の関連性について論
1.Rest時と比較して、運動によって血液中の成長ホルモン(GH)、テストステロン(T)、インスリン様成長因子1(IGF-1)は増加し、筋原線維の合成量(myofibrillar protein synthesis; MPS)も増加する。
2.血液中のGH、T、IGF-1濃度が高い状態で運動しても、MPSに差は無い。
3.GHが分泌される十分な運動下において、GHを外部投与してもMPSに差は無い。
4.GHが生まれつきない人にGHを外部投与しても筋肥大はみられない。
↓
つまり
「運動によりGH、T、IGF-1の血中濃度は上昇するが、これらと筋合成の促進が直接関連するわけではない。」
5:Resistance exercise-induced increases in putative anabolic hormones do not enhance muscle protein synthesis or intracellular signalling in young men [J Physiol. (2009) 587:5239-47.]
6:Effect of growth hormone and resistance exercise on muscle growth in young men. [Am J Physiol. (1992) 262:E261-7.]
7:Effects of growth hormone replacement on physical performance and body composition in GH deficient adults.[Clin Endocrinol (Oxf). (1999) 51:53-60.]
4)クライミング後には何を摂取するのが大切なのか論
1.運動後にはコルチゾールが血中に分泌される。このホルモンは筋肉をアミノ酸に分解し、そのアミノ酸は肝臓でグルコースになりエネルギーとして利用される。
2.コルチゾールに拮抗する作用をもつホルモンとしてインスリンがあげられ、インスリンの分泌量を増やすためには、血糖の上昇=糖摂取が必要である。
3.筋原線維の細胞膜上に存在するインスリン受容体にインスリンが結合するとinsulin-AKTシグナリングが活性化し、細胞内へ糖の取り込みを行うtransporter(輸送体)であるGLUT4の細胞膜上へのtranslocationがアップする。
4.運動によって、GLUT4は速筋と遅筋の両方で発現(存在量)がアップするがIGF-1受容体(IGF-1R)は遅筋のみで発現が増える。
↓
つまり
「運動後、速やかに糖を摂取することで、インスリン分泌の増加による筋分解の抑制とGLUT4による筋グリコーゲンの回復がおこる」
8:Blood Glucose Regulation, Fasting, Fed, Exercise, Metabolism, Epinephrine, Adrenaline, Cortisol, Insulin and Glucagon
9:Effects of an acute bout of resistance exercise on fiber-type specific GLUT4 and IGF-1R expression [Appl Physiol Nutr Metab. 2013 38:581-6.]
以上をまとめると、、
1.十分なタンパク量の定常的な摂取が有れば、運動直後のプロテインは不要。
2.運動後速やかにグルコースを摂取することで筋分解の抑制と筋細胞へのグリコーゲンロードが行える。
3.激しい運動後48時間はタンパク合成が続くので、この期間のタンパク質摂取は大切。
じゃあ最近良く聞くBCAA(分岐鎖アミノ酸;バリン、ロイシン、イソロイシン)はというと、
1.体内で生合成出来ない(食事からとる必要有)8種類の必須アミノ酸の一部で、筋タンパク中の”必須アミノ酸”の35%を占める。
2.2000mg以上を摂取すると血中のBCAA濃度が30分後から顕著に上昇して有意差が見られる。
3.運動後の”疲労感”の軽減があるらしい。
4.BCAA(その他のアミノ酸)のサプリを摂取することでプロテインを摂取した場合よりも吸収時間が短くて済む。
しかし、BCAAの摂取によって運動による筋肥大の増加および疲労の軽減に対する直接的かつ明確なエビデンスは見つけられなかった。
↓
つまり
特にBCAAにこだわる必要はない。
必須アミノ酸がきちんと摂取できていれば問題ない。
運動直後の血中アミノ酸濃度の上昇が必須なわけではないので、アミノ酸サプリである必要はない。
必要なタンパク質の量は、
「激しい運動をする人」
体重*1.5~2gのタンパク質が必要
55kgの人で、83~110g以下、60 kgの人で、90~120g以下でOK
「軽い運動」
体重*1.3gのタンパク質が必要
55kgの人で、72g以下、60 kgの人で、78g以下でOK
ボルダリング、リード共に激しい運動になると思うんだよね、、、
因みに、タンパク質を必要以上に取りすぎた場合、タンパク質の分解物であるアミノ酸は脂肪として蓄積される。
じゃあ食品にどれくらい入っているかというと、
鶏肉:15~25g/100g
豚肉:15~20g/100g
牛肉:10~20g/100g
牛乳:6g/200ml
卵:6g/個
納豆:5~8g/パック
豆腐:20g/丁
枝豆:10g/100g
麺類:10g/100g
食パン:6g/枚
ご飯:4g/150g
竹輪:12g/100g
ご飯2杯、卵2個、肉300g、竹輪100g、牛乳1杯で90g位。
クライミング後2日間はこれでOK
何もしない日は、これだと多いかな・・・
これ以外の食材にも当然の様に入っているからね。
一度自分の食事一日分に含まれるタンパク量を計算して、食事の量を調整したらいいかも。
~タンパク質概算法:食品をグループ分けして、食べるたびに数値をプラス~
A. 肉か魚介がメインの料理
+20
B. 肉か魚介のおかず(大)
+10
C. 肉か魚介のおかず(中)
+5
D. 大豆、豆類、乳製品、卵系のおかずを食べる毎に、
+5
E. 牛乳を飲む毎に
+6
F. 麺類
+10
G. ご飯1杯
+4
H. パン1枚
+6
その他
+0
因みに本日の昼飯:
ご飯小(+4弱)、豚生姜焼き(+20)、小女子の南蛮漬け(+5)、モロヘイヤとオクラ、ヒジキ(+5)、タケノコ、ホウレンソウ、切り干し大根で合計30~35位
料理が面倒、手軽に取りたい、食事で足りないと思ったら適宜プロテインやBCAAを
「サプリ」として利用すればよい。
食事で取ろうとするとどうしても脂肪分や炭水化物が増えちゃうから。
個人的にオススメの食材は竹輪。
以上の最終結論として、
クライミング中や直後は、プロテインよりも筋の分解を抑制する「糖質」の素早い摂取が大事!!
筋肥大はクライミング後2日間は続くのでTotalとして必要なタンパク質量を確保!!
平日は週2でジム、休日は外岩の人は、毎日タンパク質多めが良い!!
タンパク質は食事で十分に摂取できる!!
先ずは自分の摂取量を概算をする!!
脂質、炭水化物が気になる人、手軽にタンパク質を取りたい人、食事で十分量を取れない人はプロテインやBCAAでタンパク量を確保!!
あまり気にせず、バランスのとれた食事をすることが大切だってことだ。
タンパク質だけ取っていても筋合成が上手くいくわけではない、
微量元素やその他の栄養素も必要だから。
~追記~
タンパク質についての補足をかるーく。
タンパク質は生体内の約16%を占めているが、全て筋肉って訳ではない。髪の毛、血液、皮膚、関節、種々の細胞、ホルモン、酵素、免疫、神経伝達物質・・・・
1.DNAは生体の働きに必要なタンパク質の設計図の集合。この設計図からタンパク質を作り出す機構もタンパク質(酵素)で出来ている。
2.アミノ酸(20種)<ペプチド<タンパク質と分子量が大きくなる。つまり、アミノ酸が数個~数百個つながるとペプチド、それ以上はタンパク質って呼ばれる。
3.アミノ酸には基本的な構造がある。炭素(C)には手が4本あるのだが、そのうちの1本に付く構造の違いでアミノ酸の種類が異なる。他3つの手には同じ構造がくっついている。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類。構成元素はC、N、O、H、S
4.摂取したタンパク質は一旦ペプチドレベルまで分解されてから吸収され、体内で必要なタンパク質に再構築される。つまり、コラーゲンをたくさんとっても、ある種のアミノ酸を沢山取るだけで、コラーゲンにはなりません。因みに、糖の一種であるコンドロイチンをとっても、関節で使われません(患部への注射は別)。また、エネルギーや他の成分の原料にもなる。
5.過剰なタンパク質は脂肪になるよ~。
無酸素運動の場合、エネルギーとして、糖質→タンパク質→脂質の順に利用。
6.体内のアミノ酸は様々なタンパク質の原料になる。
酵素タンパク質:代謝酵素全般
構造タンパク質:コラーゲンなど
貯蔵タンパク質:卵白のアルブミンとか
輸送タンパク質:血液中のアルブミンとか
収縮タンパク質:みんな大好き筋肉
(アクティブアクチン滑り込みって覚えたよね!?)
防御タンパク質:抗体とか
調節タンパク質:遺伝子発現調節関連
(僕のやってる研究はスゲーおおざっぱに分けるとこの辺)
7.タンパク質には働くための構造があり、この構造は熱、酸などで不可逆的に壊れる。生卵とゆで卵がいい例。人が42℃以上の熱が出て死ぬのは体内の酵素などのタンパク質が熱で変性して失活するから。だから体温計も42℃くらいまでしかない。あと、良く働く温度、PHなどもある。
最近はやりの「~酵素」の入ったサプリ。あんなのは”全く効かない”と思ってよい。人間の胃(強酸性 PH 1~2)や膵液で不活性化されないはずがない。何かの菌が入っている奴はヨーグルト食ってるのと変わらん。ついでに、腸内フローラと疾患の関連性は事実だろうが、食品などで気軽に変更できるってのはかなり怪しい。BCAAと同じ論理の飛躍だと思う。
8.取りすぎるても体に悪い。詳しくは知らないけど、アミノ酸の代謝器官である肝臓にめっちゃ負担かける。これはマジ。
こうしてみると生体内ではアミノ酸を原料とした様々なタンパク質が働いているのが分かると思う。
筋肉以外にも沢山のタンパク質が存在するわけだから、サプリで重視されるアミノ酸(アミノ酸組成)が必ずしも生体内で要求されるアミノ酸組成に沿っているかは甚だ疑問。
最後に、Scientistはタンパク質とカタカナで記載します。学術用語だからです。
~追記~
ちょっと筋合成とBCAAに関する補足。
説明を簡単にするために、、、筋の原材料である「
アミノ酸以外の全ての条件がパーフェクト」であると仮定して説明。
1)筋合成
原材料のアミノ酸を20枚の木の板だと思ってほしい。
それぞれの必要量を10cm(=100%)とする。
その板20枚で出来る「桶の体積」が筋合成量。
当然%表示はgでないことを理解してほしい、
(つまり、例えば、グリシン(G)は5gで100%、フェニルアラニンは2gで100%、・・・・みたいな感じ)
この時に、20枚の板でどれか一つでも長さが短ければ、他19枚が10cm (100%)でも筋合成量は減る。イソロイシンが9cm (90%)しかなければ、筋合成量は90%までしか起きない。
2) 8種類のEAA(必須アミノ酸)について
これ以外の12種類は生体内で生合成できる、つまり「アミノ酸の元」が有れば必要分を作り出せるし、「他のアミノ酸」からも官能基が変わるだけなので、必要分を体内で作りだせる。
一方で、EAAは生合成できない=「
アミノ酸の形」として食事から摂取しないといけない。
注:タンパク質にアミノ酸として含まれて入ればOKってこと。
他のアミノ酸、または、より小さい原料がどれだけあっても、体内で作り出すことが出来ない。
ロイシンとイソロイシンは全く同じ原料で形だけ違う(難しくいうと構造異性体)。
料理に例えると目玉焼きとスクランブルエッグ。原料は100%一緒で形だけ違う。
つまり、
「ロイシンをどれだけとっても、体内でイソロイシンにはならない」って事。
3) BCAA(分岐鎖アミノ酸、3種類)
これらも必須アミノ酸(EAA)に含まれる。
なんで注目されているかは、前述したが、
BCAAは筋肉のEAAの35%を占めるからである。
つまり、BCAAは「筋合成の桶」に一番大きな影響を与えるんじゃね!?ってこと。
1.タンパク質全体量としては足りていもBCAAが足りないと筋合成の効率落ちるじゃん!?
2.プロテインを沢山取ると過剰量は脂肪として蓄積されて嫌じゃん!?
3.100%ぴったりなんて無理だから、どうせ過剰にするなら生合成できないEAAじゃね!?
4.てか、筋肉のアミノ酸組成に着目したら影響でかいのBCAAじゃね!?
5.BCAA過剰にしとけば、他の過剰にするより効率良いんじゃね!?
6.BCAAサプリで飲めば、一番脂肪溜まりにくくて良いんじゃね!?
7.筋肉中のBCAAの組成はバリン(V):ロイシン(L):イソロイシン(I)=1:2:1だからこの比率のサプリが効率的じゃね!?
8.筋肉には1:2:1のBCAAが最高だぜ!!
この理論通りに体が筋合成してるかどうかは知らね
そこには触れないで、理論通りだと思って高いけどBCAA買って飲んでくれ!!
by 大手食品会社
って事だ。